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八ヶ岳縦走 [旅]

   2007.8.5        
 
   久しぶりの 八ヶ岳 は好天に恵まれた
    新宿から中央線のあずさで茅野に入り
     バスでとことこ 美濃戸口
      準備をして30分ほど歩いたところで
       怪しい雲行きとともに夕立
        木陰で雨具に着替えしばらく雨宿り
         やや雨足が治まったところで歩き出す
          美濃戸の小屋で蕎麦を食べて上がるのを待つと
           しだいに陽が出てきた
            山の天気の出迎えを受けて
             今日の宿の赤岳鉱泉 に着いたのは
              予定をやや過ぎた頃だった
               軽い足慣らしのはずの初日
                でも足は痛めつけられた悲鳴を少し発していた
                 大丈夫かな...
                  同行の 吉田光夫 君も不安げだ

   翌朝は曇りで目の前の横岳の岩稜が不気味だ
    森の中を 行者小屋 まで快適に歩く
     行者小屋 からは同じ道を辿らない様にと
      キツイ 文三郎道 を選んだ
       このコースは実は初めて
        次第に角度がキツクなって
         歩きづらい金網の階段になる
          登りは心臓破りだけど下りは怖ろしそうだ
           最後は鎖の岩登りになって 赤岳山頂 についた
            いつも思うことは下から見上げて
             「あんな高い所まで行けるのか?」
              という不安...
               しかし気づけば2時間強で登り切っていた
                少しだけ湧き上がる自信...

   コーヒーを飲んで出発
    八ヶ岳の主稜線を下る
     展望荘 を過ぎてまもなく 地蔵尾根 との分岐
      衣替えをしたばかりのお地蔵さんに挨拶
       いよいよ横岳の岩場が姿を見せた
        山登りらしい両手を使っての登山は
         人間の動物的本能を呼び起こしてくれて
          実に楽しいものだ
           子供の頃のジャングルジムの楽しさだね

                   

   横岳 の核心部を過ぎて 三叉峰 で一息
    吉田君と向かい合って会話をしていると突然
     彼の肩越しの岩の先端に カモシカ が姿を現した
      その非現実的な瞬間に言葉を無くす僕
       かカかカもしカかカか...
        その威厳を持った姿は
         一瞬のうちに何故この動物が
          日本の 特別天然記念物 であるかを説明するに十分だった
           永く山登りをしていても
            始めて見る生き物に出会うことはまれだ
             時々目を合わせ僕たちを観察するように
              距離を置きながら時が流れる
               三分ほどだっただろうか...
                岩場を頭から垂直に駆け下り姿を消した
                 夏の毛の色はまさに岩の色そのもの
                  遠くに離れたら見つけるのは不可能に近い
                   厳しい自然を生き延びてきて
                    尚且つ種を残してゆくその逞しさに敬服した

                        

   硫黄岳 の小屋でラーメンを食べて休憩
    徳仁親王 が登山して泊まられた碑が誇らしげに建つ
     この小屋の付近は高山植物の女王 コマクサ が群生していて
      それは見事な姿だった
       数年前に来たときはこれ程ではなかったので
        毎年小屋の人たちが地道に保護に努めているのだろう
         無骨な山の男と弱く可憐な花との対象が微笑ましい

                     

   硫黄岳のスッパリ切り落ちた火口跡を横に見て
    夏沢峠 に下って行く
     ぐんぐん下がると小屋が見えた
      しかし ヒュッテ夏沢 には誰も人がいないし
       シャッターも下りて営業している気配は無い
        数日前に電話で確認はとったのだが
         いったいどうなっているのか
          他にも数人困った顔をして佇む人がいた
           待っていても時間ばかり過ぎるので
            2キロほどさきの 根石山荘 まで行くことにした
             森の中を10分ほど歩いたところで空からポツッ
              そのうちにあっという間に夕立になる
               残りの半分の距離を半ば駆け足で下った
                小屋の戸を滑らせた時はずぶ濡れ
                 夏沢の小屋さえ開いていればと恨み節
                  根石山荘の気の良いお兄さんに迎えられて
                   風呂に入り暖を取った

   硫黄岳の小屋と同じ経営だからだろう
    この小屋の周りにも砂の斜面にコマクサが咲いていた
     会話は出来なくても話しかけたくなるこの花の魅力は何なのか
      夕食後は永い縦走の疲れがどっと出て
       気づかぬうちに寝ていた

                       

   天気予報は梅雨前線と低気圧が頭上にあり
    そこに寒気が入り雨と雷の大荒れの一日になると言っていた
     まずは起きて様子見のつもりだったが
      霧で小屋の周りは一面何も見えない
       僕たち以外の二組のパーティーは朝食後に出発した
        僕は状況を考え 北横岳 までの行程を諦め
         今日の早い時間に 渋温泉 まで降りるつもりになっていた
          ただどんなに頑張っても4時間以上はかかる
           雨の下りはしんどいなと思っているうちに
            強い雨が降ってきた
             遠くには雷鳴が
              僕らはすぐに決断した
               ここで一日待機しようと

   一日中雷と叩きつける雨で大荒れだった
    小屋のお兄ちゃんは雨漏りを心配する
     無線連絡で今日は僕ら以外には宿泊客はいないという
      こういう一日は山ではつき物だ
       大自然には逆らえないし
        避けられる危険はかわすに越したことが無い

   根石山荘の食事は特別だ
    米も野菜もすべて山麓で手作り
     味噌も手作りでその発酵の感じが絶妙
      さすが信州だね
       夕食はお兄さんも交え三人だけの軽い酒盛りになった
        時間の流れはこの小屋で実に緩やかに変化した

                   
   翌朝は快晴だった
    雨がすべてを流し去り
     天狗岳 の頂上あたりから遠く 北アルプス の山並みが
      くっきりと姿を現した
        穂高 乗鞍 御嶽 と天を突く山達が主張する
        稜線から森の中を抜けまた稜線と
         最高にハイな山歩きになった
          昨日の大雨のせいで山に入る人も少ない
           出会う人はほとんどいなかった

                        
   中山峠 を抜け にゅう
    ここは 北八ヶ岳 が見渡せる絶好のポイント
     深い森の上から地球が呼吸するのを感じた
      白駒池 で昼食をとり
       いよいよ山を降りるときが来た
        麦草峠 は横断道路上にあり観光客も多い
         麦草ヒュッテ でバスに乗り茅野駅へ向かった
          登山は終わり 霧ケ峰 での何もしない日々に移る
           自然と抱き合えた4日間だった

                             
    7/28(土)
     新宿→茅野→美濃戸口→赤岳鉱泉

    7/29(日)
     赤岳鉱泉→行者小屋→赤岳→横岳→硫黄岳→夏沢峠→根石山荘

    7/30(月)
     根石山荘

    7/31(火)
     根石山荘→天狗岳→中山峠→にゅう→白駒池
      麦草ヒュッテ→白駒池→下山


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オケイ軍曹

カモシカもコマクサ、ニッコウキスゲ
どれもそこに行かないと見ることが出来ない
貴重な自然の宝。
初めての登山で出会った花がコマクサでした。
あまりに可愛くて見入ってしまったことを思い出します。
可憐でいながら力強く私を励ましてくれたのです。
無事帰還おめでとう!
八ヶ岳の森は気持ちいいよね。
わあん、いいな。
来年はいくぞ〜足腰鍛えなくっちゃ(^^)/
それにしてもカモシカに出会えたなんて最高やね〜
by オケイ軍曹 (2007-08-07 23:19) 

山猫歩兵

「かカかカもしカかカか...」・・・と、声がうわずる常富さんのお顔を
想像しました~ きっと目を見開いて・・・(笑)

でも、そういう状況でもカメラできっちり収めてるというところが、
凄いです。普通なら、いつ消えてもおかしくない動物を前に
じっと見ているか・・・カメラを用意するかで悩みますよ~ さすが。
(でも案外、かもしかってずんぐりしてるのね。(笑))

それにしても、素晴らしい登山でしたね。羨ましいです。
雷雨の中で一日いるなんてことも含め経験値がアップ!
なんとなく思ったのは、常富さんの登山って楽曲を作り上げていく作業に
似てるような。緻密に周到に考えた上で、雰囲気とか、盛り上がりとか、
気持ちを大事にする・・・そんな気がしました。
お疲れ様でした。
by 山猫歩兵 (2007-08-08 08:27) 

テリー

山のお話、思わず引き込まれました。
僕は山はやりませんが、気持ちよさそうですねえ、
こんな行程を体力的にこなせるのはうらやましいです、自信ないです^^)
先日の土曜日、自転車で都内を走って、あまりの暑さにバテバテでした。
by テリー (2007-08-08 08:45) 

かずみ

常富さんの登山紀行いつも楽しみにしています。
素敵な写真も楽しみな一つ。
カモシカってもっとスマートかと思ってました。

私も今夏初めての登山?に挑戦する予定です。(8月下旬)
常富さんに比べたら、ハイキング程度ですが・・・
暑さにまけず、とりあえず体力づくりと気ばかり焦っています。
by かずみ (2007-08-08 11:40) 

ikki

おお行ってこられたのですね。
この時期の横岳~硫黄岳はきれいでしょうね。
文三郎道の下りは嫌ですね、きついけどまだ登りの方が・・(笑)
最後の霧が峰の~んびり計画があったから北八の方に抜けたんですね。
去年のボクは赤岳から清里に抜けたのでした。
先日、国立のはっぽんで何人かでライブやったんですが、その中に山登り
が大好きなおじさんがいてギターをかついで山小屋で歌うんだそうです。
「オーレン小屋の唄」がとても印象深かったですね。
霧が峰はゆ~っくりできましたか?
さあ明後日からはボクの番です。
by ikki (2007-08-08 12:49) 

sekko

山やっぱりいいな。大自然の中にどっぷりつかってみたいな!とあらためて思いました。もちろん自然を甘くみてはいけない事もじゅうじゅう承知のうえで・・・常富さんは出発前腰を痛めたり、山では雷と大雨にあい、私には想像もつかないくらいいろいろあったと思うのですが、その分感動もひとしおだったのではないでしょうか?
PCのまちうけ画面や槍ヶ岳山荘のカレンダーで素晴らしい山々をながめていますが、やっぱりその場所へ行ってどのように感動するのか味わってみたいです。すぐとはいかないまでも来年を目標に。
by sekko (2007-08-08 19:25) 

YASS@大阪

 感動しました!
 私も、北アルプスに憧れを持っています!
 学生時代、北穂岳独標まで行って、足がすくみました・・。
 眼下の焼岳、対岸の?南アルプス・・
 いつか再び、訪れたいと思いました・・!
 いつか、また、行きたいと思います・・。
 
by YASS@大阪 (2007-08-09 05:43) 

tzneyan

 足腰は今回は何とか持ちました。途中の一日待機で結構休めたみたいです。おけいさん,来年は大編成で行きますか?
by tzneyan (2007-08-09 14:28) 

tzneyan

 カモシカの写真, 実はデジタル一眼でも撮ったのですが,後で見たら真っ白?何も移ってないんです。幽霊?と思ったら押さえの携帯にはちゃんと写ってました。不思議だなあ...。そうですね,音楽も山歩きも流れに逆らわず始まって終わる,イメージは似ているのかもですね。山猫さん,夏休みは?
by tzneyan (2007-08-09 14:32) 

tzneyan

 山歩きは構えないで行けばどなたでも楽しめますよ。夏山は普通の?おばさん達が実に気分良さそうに楽しんでます。それに励まされて毎年行っているようなものです。テリーさん,今の季節,自転車で都内を走るほうが恐ろしいことになりそうですね。
by tzneyan (2007-08-09 14:38) 

tzneyan

 かずみさんそうなんですよ。「カモシカのような足」って言うでしょ?あれは全然間違えで,他の鹿の事と間違えて使われているようです。ええつ!かずみさん何処の山に行くのかな?もう僕は何処かへ行きたくなってます。下旬ならばもうすっかり秋の景色。素敵でしょうね。
by tzneyan (2007-08-09 14:44) 

tzneyan

 おーうikkiさん今頃は乗鞍ですか?八ヶ岳からもひときは高くそびえていました。赤岳から清里ですか...僕は野辺山に下りたのが始めての八ヶ岳でした。霧が峰...のんびりできましたよ。次回に書かせてください。山の話も楽しみにしています。
by tzneyan (2007-08-09 14:59) 

tzneyan

 sekkoさん,秋にでも近くの山に行ってみたらいかがですか。夏がこの暑さだと紅葉もすばらしい気がします。来年ならばゴールデンウィーク頃から近くの山に足慣らしで行ってみると良いでしょう。特に靴を慣らすのは大事ですからね。楽しみですね!!!
by tzneyan (2007-08-09 15:05) 

tzneyan

 YASS@大阪さん, 西穂にぞっこんですね。穂高は一昨年に岳沢ヒュッテが雪崩で流されてしまい上高地に抜けられなくなったのが寂しいんですね。上高地からは西穂に登る人たちの小さな小さなシルエットが剃刀の刃のような稜線の上に並んでいて,それを双眼鏡で見るのも好きなんです。いい山ですよね。再び訪れる日が来ることを!!!
by tzneyan (2007-08-09 15:10) 

sekko

足慣らし大事ですよね。私もそう思ってこの秋東京近郊の山に登ろうと調べています。けっこうよさそうな場所があり、いつ頃がいいかなーと思っています。なんかそれを考えるだけでも楽しくなります。常富さんのさりげない一言がすごく参考になります。ありがとうございます!!
by sekko (2007-08-09 20:22) 

tzneyan

 sekkoさん,東京近郊ならば丹沢,秩父,八ヶ岳とかになるのかな。どこもいい山だね。始発で出かけての日帰りでもいいし,ゆっくり出かけて小屋一泊の山旅もいいですよ。僕は大体後者です。9月くらいでも寒さには注意だね。楽しんでね!
by tzneyan (2007-08-10 01:00) 

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